「やさしいビタミンのお話」(4)

第4話 ビタミンの所要量と許容量上限摂取量



.「人間は1日にどれくらいのビタミンを必要とするのでしょうか?」

.「ビタミンのとり過ぎてはいけないことは分かりましたが、どれくらいまでなら良いのでしょうか?」


 ここでは、この2つの質問に答えます。
 実は、年齢、性別、体重、活動状態、摂取するエネルギー量やタンパク質量などによって、ビタミンの必要量(所要量と言います)には相当に差異があります。もちろん、それぞれのビタミンによって違います。厚生省(現在の厚生労働省)は、多くの研究者の協力を得て検討を重ね、『日本人の栄養所要量』を定めて,公表してきました。その第6次改訂版では、13種のビタミンのすべてについて、男女別に年齢を細かく分けて、所要量許容上限摂取量とが定められています。さらに、妊婦や授乳婦では、どれくらい余分に必要であるかについても書かれています。ただし、活動状態や摂取エネルギー量などによって所要量がどれくらい変わるかについては記されていません。
許容上限摂取量というのは、それ以上にとってはいけない量です。一部のビタミンは、とり過ぎるとビタミン過剰症という病気になるから、その限度が決められているのです。
 
表1には、所要量を成人男子と成年女子について引用しておきました。さらに、許容上限摂取量も記しておきました。幼児や妊婦や高齢者ではどれくらい必要なのかなど、もっと詳しく知りたい方は、上記の『日本人の栄養所要量』を御覧ください。
 さて、自分の年令や性別から所要量が分っても、実際に自分は所要量を満たすだけビタミンをとっているかが分からなければ、不安になりますね。どれだけビタミンをとっているかは、個人個人の食事のとり方によって違います。毎日毎食違います。
第5話で述べますが、どのような食品にどれくらいのビタミンが含まれているかについては、かなり詳しく調べられています。従って、どのような食品をどれくらい食べたかを記録し計算すれば、ビタミン摂取量(体内にとり入れているビタミンの量)は、ある程度分かりますが、毎日そんなことはできませんね。
 所要量のほうも生活のし方で変動します。例えば、健康のためには適度の運動は必要ですが、運動するとエネルギーが消費され、それに伴って、いろいろのビタミンが減りますから、所要量が増えることになります。また、たばこを1本喫うと、ビタミンCが5mgほど失われるという報告もあります。
 こうなると、自分はビタミンが足りているのか、足りていないのか、さっぱり分からないことになります。
 ビタミンが足りているか不足しているかは、尿中と血中のビタミンなどの濃度を測定することによって、かなり確実に分かります。おおまかに言えば、ビタミンが足りている時には、余分な水溶性ビタミンは尿中に排泄されるので、尿中のビタミン濃度は高くなり、不足している時には低くなります。適量のビタミンをとっている時には、血中のビタミン濃度は、ある範囲(正常範囲)内に入りますが、不足すると、その範囲よりも低くなります。さらに、ビタミンが関与する酵素反応の活性(生産物の濃度など)を測定する方法もあります。しかし、毎日ビタミンなどの濃度を測定することは不可能ですね。時々病院などで測定してもらうくらいしかできませんね。
 国立健康・栄養研究所では、毎年「国民栄養調査」を行ない、その結果を公表しています。そして、日本人に不足しがちなビタミンとして、ビタミンA,B1、B2、C,Dおよびナイアシンの6種類をあげています。しかし、これは、あくまで平均的なものですから、目安程度に考えてください。
 従って、現在の日本では「いろいろの食べ物を満遍なく食べていれば、ビタミン不足は滅多におこりません。しかし、偏食したり、極端なダイエットをしたりすると、不足する危険性があります。そこで、不足の心配な方は、第10話で述べるように、ビタミン・サプリメントなどで補ってください」という結論になります。
 一方、「とり過ぎてはいけないか?」という質問に対する答えは、明確に「いけません」です。普通の食事をしていれは、過剰症がおこることは滅多にありません。ただし、許容上限摂取量が決められているビタミンをビタミン・サプリメントやビタミン剤で多量にとった時には、過剰症をおこす可能性はあります。欠乏症以外の病気に特定のビタミンが利くということから、所要量よりもはるかに多量のビタミンを摂取する場合には、注意してください。このような病気の治療や予防は、お医者さんにかかって行なってください。沢山とればとるほど早く治ると思っておられませんか。お医者さんから指示されている量を上回ってとるのは、もっての外です。

 これで第4話を終わります。





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© 「ビタミンの日」委員会,2004