「やさしいビタミンのお話」(2)

第2話 ビタミンの種類



.「ビタミンには、AとかB1とかCとか、いろいろ種類があるようですが、どれくらいあるのでしょうか?また、葉酸は、ビタミンの一種と聞きましたが、なぜビタミンの名がついていないのですか?」

.「ビタミンの前にプロのついたプロビタミンは、ビタミンとは、どう違うのですか?」


といった質問がよく寄せられます。これに答えましょう。

 第1話で、人間に必要なビタミンは13種類であると書きました。
 この13種類のビタミンの名称などを
表1に示しておきます。
 これらのビタミンは、それぞれ化学構造も性質も作用も全く異なっています。一般に、水に溶けやすい水溶性ビタミンと油に溶けやすい脂溶性ビタミンとに分類されています。  
 

(以下の小さい青い活字のところは、少しややこしいので、飛ばして頂いても差し支えありません)

 これ以外に、ビタミン様化合物あるいはビタミン類似化合物と呼ばれている化合物が10種類以上もあり、また、かつてはビタミンと考えられていたけれどもビタミンとは言えないとして削除されたものも10種類以上あります。
 
 さらに、ヒトではビタミンであるが、ある種の動物ではビタミンではないものもあります。例えばビタミンCを体内で作ることができる動物が知られています。このような動物では、ビタミンCは体外から取り入れなくてもビタミンC欠乏症がおこらないので、ビタミンとは言えないことになります。


 ビタミンAやビタミンCなどのように英語のアルファベットがついているビタミンのほかに、葉酸やパントテン酸のように化学名で呼ばれているビタミンがありますが、それほど特別な理由があるわけではありません。
 A,B,Cなどは、命名された順番につけられましたが、発見された順序とは完全には一致していません。また、ビタミンKは、順序ではなく、その凝血作用からKoaguration(ドイツ語で、凝固という意味)の頭文字が付けられました。
 さらに、ビタミンB1やビタミンB2のようにBの後に数字がついているものもありますが、発見された時にビタミンBと呼ばれたものが、その後の研究で純粋でないことが分かり、加熱で分解しやすい成分(B1)と加熱に強い成分(B2)とに分離できたので、加熱で分解しやすい成分をビタミンB1、加熱に強い成分をビタミンB2と命名されたのです。続いてB3やB4などと命名されたものが提唱されましたが、その後にビタミンとは言えないことが分かって削除されたので、B1、B2の次はB6で、その次はB12まで飛んでいるのです。

 さらにややこしいことには、B1、B2、B6、B12は、同じBがついていますが、化学構造も作用も全く異なる化合物です。ところが、A1とA2、D2とD3、K1とK2とK3は、それぞれ、化学構造も作用も極めて類似した化合物なのです。また、質問にもありましたように、葉酸のほか、パントテン酸、ナイアシン、ビオチンもB群ビタミンの仲間であるにもかかわらず、B何々というように名付けられていません。このような命名法の不統一が、ビタミンに対する理解をむずかしくしている原因の一つかも知れませんね。

 次に、第2の質問「プロビタミン」について説明しましょう。プロ(pro)というのは、を意味する英語の接頭語です。プロビタミン(provitamin)は、直訳的に言えば、前ビタミンとなりますが、しばしばビタミン前駆体と訳されます。体内に入ると化学的な変化を受けてビタミンに変わる天然化合物です。天然化合物とは、自然界に存在している化合物のことで、人工的に作られた(化学合成された)ものと区別する時に使われる言葉です。
プロビタミンの代表例は、ニンジンなどに含まれているβ‐カロテンです。体内に入ってビタミンAになりますので、プロビタミンAの1種です。


 カロテノイドと総称される一群の化合物のなかには、β‐カロテン以外にも多数のプロビタミンAがありますが、ビタミンAへの転化率(ビタミンAのできる割合)は、それぞれ異なります。そこで、これらプロビタミンAのビタミンA効力をあらわす場合には、転化率を考慮に入れる必要が出てきます。

 ビタミンDにもプロビタミンがあります。生椎茸などに含まれているエルゴステロールは、紫外線を照射すると、ビタミンD2に変化しますので、プロビタミンD2と言われてきました。また、コレステロ−ルから生じる7-デヒドロコレステロ−ルも皮膚に移行して、日光に当るとビタミンD3になるので、プロビタミンD3と呼ばれてきました。エルゴステロールも7-ヒドロコレステロールもビタミンDの製造原料として使われています。

 使い途を拡大したり、体内での挙動を変えたりする目的で、人工的に、水溶性ビタミンを油に溶け易い化合物にすることも行なわれています。例えば、ビタミンB2(リボフラビン)をアセチル化すると脂溶性のアセチルリボフラビンになります。これは体内に入るとアセチル基がはずれてリボフラビンになります。このような化合物は、体内に入ってビタミンになるからといってプロビタミンと呼ぶのは誤りです。人工的な産物で、天然には存在しないからです。

 これで、第2話を終わります。





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