「やさしいビタミンのお話」(1)

第1話 ビタミンとは



.「ビタミンは、薬(くすり)なのでしょうか? 近頃は薬局のほかに、スーパーなどでもビタミン・サプリメントとか言った名前で売られていることからは薬ではないように思えるのですが、どうなのでしょうか?」

.「ビタミンは、とり過ぎても害はないのでしょうか?」
 
.「ビタミンとホルモンとは、どう違うのでしょうか?」


といった質問をよく聞きます。

 最初の質問の「ビタミンは、薬なのか?」には、「そうです」とか「ちがいます」というように、単純には答えられないのです。少し長くなりますが、以下の説明を読んでください。
 ビタミンは、「極めて少ない量で動物の栄養に影響を及ぼし、しかも体内では作れないので、体外からとり入れなければならない有機化合物」の総称なのです。総称というように、1種類だけではありません。人に必要なビタミンは13種類とされていますが、そのほかにビタミンと類似した作用を示すビタミン様化合物があります。
 人も含めて、すべての動物は、生きていくために、体外から栄養物をとり入れる必要があります。3大栄養素と言われる糖質(砂糖やデンプンなど。炭水化物ともいう)、タンパク質(肉や豆などに多い。アミノ酸がつながったもの)、脂質(脂肪、植物油など)だけでなく、第4の栄養素と言われるビタミン、さらには、ミネラルを必要とします。これらの栄養素を含んでいる食べ物を食べることによって生きていけるのです。もちろん、このほかに水分が必要です。また、食べ物には、栄養にはならないけれども、それがないとお腹の具合が悪くなったりする食物繊維なども含まれていますから、いろいろの食べ物を偏食しないで食べることが最も大切なのです。
このように、ビタミンは、それを含んでいる食べ物を食べることによって体内にとり入れられる栄養素ですから、本来は、薬ではありません。
 しかし、偏食したりすると必要な量をとり入れることができなくなり、ビタミン不足症になり、さらにビタミン欠乏症と言われる病気になります。ビタミン不足症やビタミン欠乏症は、ビタミンをとれば治ります。薬とは、それを与えれば病気を治すことができるものと考えれば、ビタミンは薬であると言えます。
 「偏食するな」と言われても、ほとんどの人は食べ物に好き嫌いがあります。まして、ビタミンの必要量(所要量と言います)が体内にとり入れられているかどうかを計算しながら、毎日の食事をするようなことはできませんね。そこで、ビタミンが不足しないように、食べ物以外からビタミンをとれるように、ビタミン・サプリメントやビタミン剤が売り出されるようになったのです。ビタミン・サプリメントは、栄養機能食品、栄養補助食品などの名称がつけられていますが、ビタミン欠乏症の予防薬と考えてもよいでしょう。
 さらに、近年の研究の進展によって、いくつかのビタミンは、所要量以上に多量を与えると、ビタミン欠乏症とは異なるいろいろの病気を治したり予防したりできることが明らかになってきました。いろいろの薬理作用があることが分ってきたのです。このような薬理作用の発揮を期待して与えられるビタミンは、正に、薬と言えます。
まとめとして、「ビタミンは、本来、食べ物からとる栄養素であるが、不足する心配がある場合には、ビタミン・サプリメントなどで補給するのが良い。また、特定の病気の治療や予防には大量のビタミンを薬として与えることがあるが、これは、お医者さんの指示に従ったほうが良い」と言えます。

 次に、第2番目の質問に簡単に答えておきましょう。とり過ぎるとビタミン過剰症と言う病気になるビタミンもありますが、ほとんどのビタミンは、少々余分にとり過ぎても、無駄になるだけで、害はありません。これについては、第3話で詳しく述べます。

 第3の質問の「ビタミンとホルモンとの違い」についても、簡単に答えておきましょう。どちらも動物の体内で、微量で、重要な役割をする化合物ですが、ホルモンは動物の体内で作られるのに対し、ビタミンは作られないと言う点が大きな違いです。ホルモンにも沢山の種類があり、もし体内で必要量が作れない場合には、そのホルモンを薬として与えることがあります。
このほかに、動物が生きていくために体外から取り入れる必要があり、比較的に僅かな量で役立つものに、カリウム、カルシウム、亜鉛、鉄などのミネラルがあります。ミネラルは、無機物であるのに対し、ビタミンは有機物であると言う点が異なります。
最近は、微量で重要な作用を営むビタミンやミネラルなどをまとめて、バイオ・ファクター(Biofactor)と呼んでいます。


 第1話は、これで終わります。





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© 「ビタミンの日」委員会,2004